盗まれた、その後 〈前編〉

11月24日、サンクスギビング直後に発覚した車の盗難事件。 
気丈に振舞って、いつもの様にジョークを飛ばし続けるオスカーだったが、
それでも私にはわかる。
頭の隅には常に盗まれた車の事が引っ掛かっているのだ。

盗難が発覚し、防犯カメラの粗い映像で犯人の姿を見た時、
私には「あの人じゃないか?」と思い当たる人物がいた。
5年以上前にオスカーがお金を貸したまま姿を消し、 
最近突然オスカーに電話を掛けて来た男、Mだ。 
彼はお金を借りたままであったことをまず謝り、
それから自分の持っている車を買わないか、と持ちかけて来た。
オスカーはMの家まで車を取りに行き、
エンジンもかからないボロ車を
ロープを使ってけん引してきた末に、Mに200ドル支払った。
ところが数日後にまた電話を掛けてきたMが
「スクラップ場がもっと高く買ってくれるそうだから
そっちに売る事にした。
200ドルは後で返すから」と言い、
再びオスカーからロープを借りに来て
「子どもがこんなに大きくなったのか?」などど
オスカーと話している姿を私も見ていた。
ところが、それ以来連絡がつかなくなり、
オスカーは「また騙された!」と嘆いていたばかりだったのだ。
そのMにそっくりな背格好の人物が防犯カメラの映像に写っていた。
「これ、Mじゃない?」と映像を見せながらオスカーに言うが、
いまいちピンと来ない様子。
しかし念のため、調書を取りに来た警察に、
心当たりがある人物としてMの名前を伝えた。

画質が悪い上に、夜の映像なので顔が判別しにくい。
これでは誰か、断定できないかも・・・。

鑑識の女性が指紋を取りに来てくれて、
防犯カメラでMが触った車を手当たり次第に調べてもらったが、
どの車からも指紋が全く出ない。
「ほら、手袋の形がわかるでしょ?」
鑑識官の説明を受けて、半ばがっかりしながら
盗まれた3台の車があったスペースを見つめていた。
ふと、車の上に置かれたソーダのカップに目が行った。
もしかして!と思い、慌てて防犯カメラの映像を見返す。
犯行が行われた日、まだ明るいうちは
カップはその場所に置かれていない。
犯人が1台目を盗んだ時も、2台目を盗んだ時にも、
車の上にはカップがない。
そして3度目に犯人が画面に登場した時だった。
その右手にはっきりとカップが握られているのが写っていた。
ドキドキしながらビデオを見続けた。
カップを置いた瞬間は見えないものの、
その数分後に、犯人が運転する車のテイルランプに
浮かび上がるカップが確認できた。
「間違いない!犯人が置いたカップです!」
外に走り出て鑑識の女性に伝えると、満面の笑みが返ってきた。
ソーダを買う時に手袋をつけている人は少ない。
指紋よ、出てくれ!

翌日、指紋が確認された。
やはりMの指紋であった。
Mには前科があったらしく、すぐに照合されたのだった。
刑事さんの話によるとMは麻薬中毒者らしい。
それであんなにやせ細っていたのか。
ちらりと見かけたMを思い出して納得。
オスカーには癌を患っている、と言っていたらしいが。

犯人はMと分かったものの、彼が捕まったニュースはなかなか入らない。
ヤキモキしているうちに盗難された車が2台見つかった。
どちらも、あるアパートにナンバープレートがないまま駐車されていて、
放置された車とみなしたアパートの管理人がレッカー会社にけん引を依頼。
車体番号を照合して1台目は盗難届が出ていたので、うちの車と判明。
しかし2台目は私達も盗まれた事すら認識していない車だった。


情けない話だが、増えすぎた車の数が災いし、
オスカー以外に3人の作業員が洗車したり、清掃したりするので
並びが変わるのを把握しきれず、車がなくなっていても気づかないのだ。
さらに鍵をいちいち探すのが面倒だから、と
ほぼすべての車の車内に鍵を入れたままにしていたオスカー。
最初の通報後、車の中から鍵を全て回収するように、と
警察から何度も念を押されていたのだが
「わかった」と言いつつ、そこはオスカーである。
各列先頭、つまり一番手前の車から鍵を取り出せばいい、と判断。
二列目以降の車内には鍵を残してあったのだった。
この甘い考えが災いした。

最初の盗難から10日ほど経過した日、
ラケットボールの帰りにパトロールで車屋に立ち寄ったオスカー。
裏手の車2台ぶんのスペースが空いているのに気づいた。
鍵を回収した一列目から数えて3台目と4台目の車である。
4台目の後ろ、隣接店舗の駐車場との境目には植え込みがあったが
車を思いきりバックさせ、頼りない数本の木をなぎ倒して盗んだと思われた。
そう電話で私に連絡が入ったのは夜の11時近く。
オスカーは少し離れた場所に車を停めて 犯人が戻ってくるのを待った。
寒い夜だった。
しかしエンジンが掛かっていると車内にいるのがわかるかもしれないので
暖房もかけずに暗闇の中で待ち続けた。
自宅にいた私は心配で眠れず、ベッドの中から数時間毎に
オスカーの携帯に電話を掛けて生存を確認。
そうやって結局朝の6時近くまで張り込んだが犯人は現れなかった。

風邪まで引いてしまったオスカーは悔しがっていたが、
犯人が現れないのは当然の事だった。
翌日監視カメラを見てみると、その2台の車が盗まれたのは
オスカーが張り込みをした夜の3日も前だったのだ。
映像から車が消えた日を探し、
少しづつ巻き戻して行くと、 またもやMらしき姿が映っていた。
三度目に警察に通報。

担当刑事さんも呆れ果てていたと思うが、
オスカーは苦笑いしながら 「Mの方が一枚上手だったな!」などと言っている。
正直私は「やってられない!」と思った。
鍵を全て車の中から取り出し、
ドアを完全にロックしてしまえばいいじゃないか。
あと何台盗られたら防犯対策する気になるんだ! と
真っ向から意見してみるものの、返って来た答えはこうだ。

「盗もうと思ったら、ガラスを割ってでも、
鍵をこじ開けてでも いくらでも盗む方法はある。
ガラスや鍵穴、ドアを修理しなければならないくらいなら
鍵を掛けずにおいてカーステレオでもなんでも
盗ってもらった方がいいだろ。」

この男につける薬なし。
私のイライラも沸点に達していた。

そんな時、M逮捕の連絡が来た!

〈つづく〉

元旦 初釜

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開けましておめでとうございます。
2019年も『フロリダ娘』をどうぞよろしくお願いします。

雅びやかな写真で幕を開けた今年の初投稿。
元旦にクリスがお茶会に招いてくれたからである。
ニューヨークの大学で教鞭をとりながら、
日本人の先生に茶道を習い、かれこれ2年以上になるだろうか。
クリスの茶道への情熱は冷めるどころか、
ますます夢中になっている様だ。
日本人のくせに茶道のサの字も知らない私は
クリスの技術やマスター度をあれこれ言う立場ではないが、
素人目に見ても細部への気の配り方は素晴らしいと思う。

私と息子達2人がまずお茶を頂いた。
抹茶は一保堂から、
和菓子は源吉兆庵から、ニューヨークで仕入れ済み。
準備万端、本格的だ。
茶碗もまた増えて、クリス好みの個性的な茶碗が勢ぞろい。
達磨の目が動く茶碗、鬼は外福は内の洒落っ気ある茶碗。
菓子を置く皿も美しい青の鶴が描かれていた。
静かにお湯が沸く釜の前で、
優雅に入れられたお茶を頂くと
キュッと気持ちが引き締まる。
一年の初めの日にふさわしいひとときだった。
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今回のお茶会にはクリスのいとこが2人参加した。
姉は現在台湾に、弟はオーストラリアに住んでいるが、
クリスマスめがけてフロリダにやってきたのだ。
クリスのお茶を見るのも、飲むのも初めてである。
2人とも知的で穏やかな人達で、
初めてとは思えないほど茶席にしっくり合っていた。


夏に私が日本へ帰省した際に、クリスに頼みごとをされた。
自分が持っている日本の絵を掛け軸にして欲しい、と。
母に頼んで地元で表具職人を探してもらい、
私達が到着する前に話を聞きに行ってもらった。
私達の滞在期間は短すぎるので帰るまでには間に合わない、
と言われていたが、到着して直ぐにクリスの絵を持ち込んだ。
表具職人と言っても自分はもう引退して
今はゲートボールが本業だ、と笑うおじいさん。
クリスの絵を見せると、
どうやらもともと掛け軸だったものを、
誰かが額に入れるために上下部分を切って
絵の形にしたのではないか?と言われた。
クリスの予算を伝え、もし時間がかかるなら
母がアメリカに郵送するから、と伝えて絵を預けて来た。

アメリカに戻ってしばらくして掛け軸が届いた。
ところが包みを開くと、箱が2本入っていた。
母の説明によると、出来上がった掛け軸を取りに行ったら
「これ、アメリカのしょ(人)にやる!」と
2本目を渡されたそうだ。
「お礼なんていらねんだっけね。 アメリカのしょにやるんだっけね。」
と念を押されてもらって来た作品が、写真の掛け軸なのだ。
新潟では有名な書道家の作品を、
自分の好みで仕上げた 表具職人のおじいさんの自信作だそうだ。
それからずっとクリスの母の元で保管され、
ようやく帰省したクリスの手に渡り、
元旦の初釜にお目見えしたのだ。
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フロリダで愛でられています!

年越し あと3時間

フロリダも2018年は残り3時間!
すでに年が明けた日本の家族や友達からは
「開けましておめでとう」メッセージが。
もうちょっとで追いつくよ。

2018年最後の日に、とっておきイベント!
この街に住む日本人16世帯が集まってのお節料理交換会。
1家庭が1、2品の料理を担当し、それを16家族分作る。
夕方5時にうちの車屋ショールームに集合して お料理を交換。
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取りやすいように小分けにして持ってきてくれた皆さん。
できるっ!

私は故郷の新潟ではお正月に欠かせない郷土料理 「のっぺ」を作った。
今回もターキーフライヤーの大鍋が大活躍!

皆さんのおかげでこんなに本格的なお節が完成!
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解散後、帰宅して重箱にささっと並べ、写真撮影。
それが待ちきれない!とばかりに つまみ食いしようとするヤカラ続出。
毎度のことだが、我が家では お節料理が年を越せる事はまずない。
食卓に並べて数十分。
跡形もなくキレイさっぱり食べ切ってしまった。

今年は年の瀬に色々な事が立て込んで、
精気が抜かれる思いだったけれど、
皆さんのおかげで何とか年を越せそうだ。
満足感と達成感と、何より感謝感謝。

サービス精神と分かち合う喜び。
どんな時にも笑い飛ばせる力強さ。
そしてやっぱり感謝の心。
2019年も変わらない私のテーマ。

マクドナルド・ハウスでボランティア

次男は郡のマグネット・プログラムという、
勉強強化コースの様なものに入っている。
このプログラムの必須項目として 各自がボランティア活動をし、
地域に貢献する事が義務付けられている。
9週間に9時間づつ、4期に分かれているので
合計36時間のコミュニティ・サービスをしなければならない。

1期目は地元のブックセールのお手伝いをした。
しかし2期目に何もしないまま、
うっかり月日が経ち 気づけば2期終了まであと2週間。
そこで日曜日の今日、マクドナルド・ハウスへ行ってきた。

ご存知マクドナルドがチャリティー活動として
患者さんの家族が滞在できる施設を全米各地に作っているのだ。
わが町にも立派な大学病院があるので、
遠方から治療を受けるためにやって来るファミリーが沢山いるのだ。
今回のボランティアはSweet&Treatsと言って、
予約した日時に材料を持参し、お菓子を作りに行く。
次男と相談してカップケーキを作ることに決めた。
ケーキミックスを使って合計48個焼き、
冷えるのを待って2種類のデコレーションを施した。
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お花ケーキはフロスティングの上に
半分に切ったマシュマロを花びらに見立てて載せる。
切り口がペタペタしているので赤い砂糖をつけると
また雰囲気が変わる。
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クマさんケーキはジップロック袋の角に竹串で4つ穴を開け、
白いフロスティングを入れて絞り出し、毛の感じを出す。
目と鼻にM&M、耳と口周りをクッキーで作った。

作っている間にも、滞在している家族が通って行ったり、
ダイニングスペースに座ってコーヒーを飲んだり。
カップケーキが出来て片付けをしていると、
早速子どもを連れた親子がやって来て
「わー!かわいい!!」
「もらってもいいの?」 と喜んで食べてくれ、
その他数人にも Good job! と褒めてもらって、
日本人気質の私達親子はモジモジ。
家族が大変な時に人を褒める心の余裕があるなんてすごいなぁ、と
内心、感心しているのだが、それを表現するほど饒舌ではない。
合計3.5時間かけて後片付けまでを終え、帰ってきた。

今年もあと1日。
明日は夕方、地元の日本人家族16組が 15種類の料理を持ち寄って、
お節料理交換会だ。
私は新潟の「のっぺ」を作る。
さーて!もうひと頑張り!!

クリスマス 2018

数年前、オスカーの「サンタいない」発言以来
魔法が解けてサンタクロースが我が家にやってこなくなってしまった。

次男は「ニンテンドー・スイッチが欲しい」と
念仏のように唱え続けているが、
ゲームやビデオを見る時間を短く報告する傾向が祟って
誰も買ってあげようという人間が名乗り出ない。

子ども達は長期休みが来ると、待ってました!とばかりに体調を崩す。
私にも風邪がうつってしまい、24日〜25日がピークでグッタリ。
流石に何もないクリスマスではかわいそうなので
先日購入したターキーフライヤーを使ってディナーを作った。
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プロパンガスのシリンダーに装置を繋いで、
鍋を乗せて点火する、というなかなか原始的な作り。
11リットルのピーナッツ油を鍋に空け、163度まで加熱。
6.8kgのターキーを約1時間揚げる。
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最後の10分でジャガイモやズッキーニを丸ごとポンポン放り込んで、
同時にフライにしてしまう。
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こうしてできたターキーはカリッカリの揚がりよう。
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陽が落ちる前に、と慌てて外に料理を並べて 家族4人でクリスマス・ディナー。
12月も終わりと言うのに蚊が飛び回っていて 何箇所か刺されてしまったので、
食事後室内に退散。

サンタクロースは来なかったけれど、なかなか楽しめたクリスマスだった。