ボケのはなし

ボケという植物をよくご存知の方は、あまりいないかもしれない。

植木市などで並べていても、
「ボケだって!あははっ!
お父さん、これあんたにぴったりだよ!買ったら?」
などと、小さな笑いのネタにされてしまうことが多い。
華やかな響きの「薔薇」、
音がやわらかい「さくら」などに比べて、
「ボケ」は完全に名前負けしている。

漢字は「木瓜」と書く。
もともと「モッケ」が訛って「ボケ」になった、と
ネットで検索してみて知ったが、
訛らせた先人に物申したいほどである。
名前のダメさを乗り越えて、さらに興味を示してくれる人は、
「薔薇」や「さくら」に引けをとらない
ボケの魅力を感じてもらえるはずなのに。
(と言うことで、ぜひ、読み進んでほしい。)


ボケは日本原種のクサボケと、中国原産のカラボケがあり、
江戸時代から観賞用として存在した。
明治から大正初期にかけ、新潟で生産が盛んになり、
庭木や盆栽などとして親しまれる、
現在のボケの親木が生産された。

この新潟県のボケのメッカで、フロリダ娘は生まれた。
信濃川の豊かな水を利用して、
切花、球根、盆栽や植木を育てる園芸農家が
密集している地区である。
私の家も三代続く園芸農家。
小さな頃から祖父母や父母にくっついて、
ビニールハウスや畑に行き、ドロだらけになって遊んでいた。
畑に植えられたボケは、野性味たっぷりでヤブ状態になるので、
トゲだらけ!近寄ったら危ない!と、よく注意された。
それを鉢に上げて、盆栽として枝を整えたり、
丹精込めて育てれば、ごく小さな木でも花をつける。
枝先に花が密集して一斉に開く、その様は圧巻だ。
花の季節になり、ビニールハウスのボケの花が
競うように咲き乱れる頃には、
幼心にも「きれいだなぁ」と思ったものであった。

ここでぜひ、こちらで、写真を見ていただきたい。

一重咲きは5枚の花びらが可憐な風情をただよわせ、
八重咲きは薔薇やカーネーションに負けない豪華さ。

椿を思わせる深い赤色の品種があるかと思えば、
淡い淡い色の花がある。

一つの木に白、ピンク、紅が咲き乱れる品種は、
美しい織物を見ているかのようだ。

咲き始めは真っ白で、徐々に赤みを増す、変化種もある。
こんな植物は、他にはあまりないだろう。

そして品種名はその花の輝きを一言で表現し当てた、
あでやかで、個性溢れるもの揃いだ。
「東洋錦」「越の夕映え」「長寿冠」。
田舎のとぉちゃん達に、こんな雅やかなネーミングセンスがあるとは、
感嘆の思いであると共に、
このボケの名前がなんとも懐かしい。
こういった名前をよく聞いていたのは何十年も前なのに、
記憶の片隅に残っていて、その頃の思い出が蘇ったりするから不思議なものだ。

現在も日本ボケ協会主催のボケ祭りが、毎年開催されていて、
3月になると、我が父も大忙しだ。

そうそう、ボケは別名「放春花」(ほうしゅんか)とも呼ばれている。
3月早く、春の訪れを告げるように咲くからだ。
皆さんも新潟を訪れる機会があったら、
夏の海の幸、
冬の山のスキー、
そして春のボケの花も忘れずに、楽しんでいただきたい。