S姫の置き土産

以前私をベタの世界にどっぷりと沈没させ、
繁殖させてしまうほどの狂気に駆り立てた、
あのS姫がヒョッコリ遊びにやってきた。

遠くに行ってしまっていたS姫と会うのは1年ぶりだ。
彼女と一緒にいると、ふざけ具合が相乗効果でどんどんエスカレートし、
気づくといつも、狂気の一歩手前のようなことをしてしまっている。

二人とも動植物が好きなので、
あれがしたい、これがしたいと話を始め、
じゃあペットショップに行ってみますか?
などということになって、
ハッ!と気づけばペットショップの水槽の前で
何十分も延々と、二人で大口を開けていたりするのである。

今回S姫の滞在は10日ほど。
しかし彼女は公務に忙しく、とてもタイトなスケジュールであった。
なので10日間ずっとマニアックな遊びをしていられたわけではなかったが、
それでも何度か密な時間を共にすることができた。

S姫がいる間に、水槽が一つ増えた。
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ミッキーマウス・プラティとバルーンフィッシュの混泳水槽。

我が家は至る所に水槽があるのだが、
これは見目麗しい、珍しい水槽となった。
(ほかにはカミツキやマタマタ、にょろっとしたサイレンなど
ゲテモノ風なものばかりだから。)

S姫は草花の寄せ植えや、球根を増やすことを得意とし、
さらにアジサイの枝を切って、挿し木で増やしたりと、
本当に植物を育てるのが上手なのだが、
動物を操る才能にもかなり長けていると、私はにらんでいる。
その鋭い観察眼で、毎日見ている私が全然気づかないことを
ピタリと指摘して、こちらに恥ずかしい思いをさせるのもうまい。

まちがいない。
S姫のまたの名は『Sゴロウ』。
(動物を操る天才・ムツゴロウさんをもじらせて頂いた。)

Sゴロウの実力が発揮されたのは、
彼女が数回我が家に足を運んで、私が大事にしてきた
40ガロンの水槽を見に来てあれこれ言って帰ったその日だった。
何気なく水槽を覗くと・・・
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なんと!ものすごい数の稚魚が孵化しているではないか!

Sゴロウ!何をしてくれたんだ!?

しかもどの魚の稚魚なのかわからない。
数匹のメダカと、ベタが入っていたのだが、
Sゴロウが来る数日前にホワイト・スカート・テトラを5匹、
投入したばかりであった。
おそらく、このホワイト・スカートの稚魚だろう。
それにしても大発生。
てんやわんやである。
稚魚用の餌も何もなく、おそらく大半が淘汰されて
生き残るのはほんの数匹であろうと思われるが、
あまりに突然の出来事でSゴロウ・マジックとしか思えない。


S姫が帰っていき、寂しくなってしまった。
夏の終わりが急にやって来たみたいだ。
彼女の置き土産となった水槽を、毎日ボーッと眺めている。
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このプラティも繁殖が簡単らしい。
すでにお腹にオレンジ色のイクラ風な物が入っているのが
透けて見えている。
プラティは卵でなく、稚魚を産むので、
その瞬間を見るのも楽しみだ。

そして今日、S姫からメッセージが入った。
なんと彼女も水槽を買い、ベタを飼い始めたと言うのだ。
またまた二人でお互いの魚の成長具合から、
水槽のレイアウト、繁殖の進展まで、
盛り上がって、いや、燃え上がってしまいそうな気がする。


親しいと思っている人は、実は単に一緒に過ごす時間があり、
共通の知人や悩み、話題を持っているから、
お互いわかっている気がしているだけの事もある。
だからしばらく離れていると、何を話していいのかわからなかったり、
時間や距離が思っている以上の溝を作っている場合もある。

だけどS姫とは、彼女がずっといなかった気がしないくらい、
昨日も先週も、先月も、そうやって、
同じ場所で笑い転げていた気がするくらい、
あっという間に「今」の「私たち」でいられる。

夏の思い出はS姫の思い出。
どんどん増える置き土産をする、憎いヤツ。

事実は小説より奇なり ~続・ある移民家族の物語~

とんでもない移民家族を迎え、そして一方的に絶交されてから、1か月が経過した。
もちろんこちらから連絡もしていなければ、向こうからも音沙汰なかった。


昨日のことだ。
車屋のオフィスのドアをノックして、M(移民家族・父)が入って来た。
彼は私達に軽く挨拶した後、オスカーに外へ出て話したい、
と促したらしく、二人は出て行った。

「R(移民家族・母)は、あれだけの罵詈雑言を吐いておいて、
今更、旦那を謝らせによこしたのか?」と
イライラしそうになる自分をなだめながら私は、
同時に、今度は何をどこまでお世話しろと言うのだろう?と
暗澹たる気持ちになった。

何時間もしてから、やっとオスカーが戻って来た。
またまた、信じ難いニュースを持って。

Mは、3日前に自宅で妻のRと口論の末、Rの顔面を殴った。
Rは警察に通報し、Mは連行されて留置場で2晩を明かした。
現在、Mは保証金を払って保釈された身であり、
期日未定の裁判に、いづれ出頭しなければならない。
保釈の条件として、被害者・Rに近付いてはいけないし、アパートにも帰れない。
「昨日は公園で野宿した」とオスカーに言ったそうだ。

「もうあの女には我慢できなかった!
俺はさっさとイランに帰ってすぐにでも離婚する!」と言うM。
オスカーはそこで、あの夜、Rが私に言った内容をMに伝えた。
Rが私を蔑む言葉を言った、と聞いて、Mはひどく衝撃を受けたらしい。
Mはあの夜、何度もRに「何を言ったんだ?」と訊いたが、
Rは「何も言っていない」としらを切り通したのだと言う。

M 「じゃあなんであの時、(フロリダ娘)は俺たちに
車に乗って行け、と何度も言ってくれたんだ?
Rがそんな事を言った後に・・・。
恥ずかしくて、もう合わせる顔もない。」

オスカーは複雑な思いだったのだろう。
Rの失態後、分別のある夫なら、こちらと連絡を取って
事態を把握するなり、何かしら行動できたはずなのに、と腹立たしい反面、
Mが野宿をしていると聞いて居たたまれなくなり、
結局、Mに車屋(第2店舗)に泊まっていい、と言ったらしい。
薄々、私はオスカーがそうしているのではないか、と思っていたが、
もう好きなようにさせておいた。


そして翌日(今日)、オスカーがオフィスに行くと、
Mはおらず、置手紙があった。
『自分の物を取りに行ってくる、午後には戻ってくる』と。
前日、勝手にアパートに戻ったら、また捕まるぞ、
と言っておいたのに、と嘆くオスカー。

「Mは今うちの車屋に泊ってること、Rにベラベラ喋っちゃうんじゃない?」
と、私が言ったが、オスカーはお構いなしの素振り。

昼過ぎ、警察官がやってきた。
Mを探していると言う。
その警察官はオスカーの事をよく知っていた様子で、
「自分やパトカーがちょくちょく来ていたら、ビジネスの邪魔になるから
Mが来たら電話して」と、
電話番号を渡してくれ、帰って行った。
しかしなぜ、警察官がMを訪ねて、うちの事務所に来るのだろう?
私が予想した通り、やはりRが警察に連絡したのではないだろうか?


夕方になってもMは戻ってこなかった。
私は裁判所のウェブサイトで、彼のファイルを検索してみた。
すると昨日は1つだけだったファイルは2つに増えていて、
新しい方のファイルには『被疑者拘留中』の文字が。

Mがアパートに現れたので、Rが警察に通報したのだろう。
保釈の条件である「被害者に近付かない」という命令を破ったので、
また逮捕されてしまったに違いない。

オスカーは同情する必要もないと分かっているが、
何だかかわいそうだ、と落ち込んでいた。

確かにRのキレ方と、病的被害妄想を目の当たりにした私も、
Mがこの1か月間、相当な努力で我慢したのだろうと思うので同情もする。
我が家に滞在している短期間にも、Rは誰かをターゲットにして責め、
怒っていなければ生きていられない様子だった。
その攻撃を一身に受けたMは、きっと耐えられなかったのだろう。

しかし、しかしだ。
手を出したのは完全にまずかった。
法的にも、そして戦略的にも。

私はMに望みを託していた。
どうにかしてRを説得するなり、そそのかすなりして、
イランに家族全員で戻る、という選択をしてくれないか、と。

Rは「してやったり!」とばかりに警察に通報しただろう。
英語が全く分からない、喋れないMは完全に不利だ。
右も左もわからないこの国で、2つの余罪を背負ってしまったのだ。
これから裁判にどれくらい時間がかかるのか、
そして判決がどう出るのか、私にはわからない。
しかし、家族揃ってイランへ帰る、と言う道は、ほぼ断たれたのではないだろうか?


夢の国へのフリー・チケットを手にした移民家族。
たった1か月で、父は犯罪者、
母は無職で、この先の生活の目途は立っていない。
娘二人は家庭崩壊を目の当たりにした。

そして今、あの狂った母親の「言葉の虐待」のターゲットとして残ったのも、
娘二人のみ。


私の想像を裏切って裏切って、
毎回より最悪な方向へと展開していく、移民家族の物語。

ここからはどうにかして、
「誇り高きシングルマザーが、新しい土地で身を粉にして働き、
二人の美しい娘を立派に育て上げて幸せになる」
という、ハッピーエンドになってほしい。

フロリダで一番小さな動物園 2015年 夏

動物コレクターが約2名ほどいる我が家。
相変わらずニワトリとターキー、孔雀までが庭を歩き回り、
家の中は水槽がそこかしこに設置されている。

今年の夏も、長男は新しい動物をゲット。
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こちらはサイレンくん。

少し前に細身のサイレンを飼ったので、
すでに我が家にはサイレン1号がいるのだが、
この個体は本当に立派で、今まで見た中で一番大きい。
行きつけの爬虫類ショップに餌を買いに寄った際、
あまりの貫録に、長男が一目ぼれしてしまったのだ。

サイレンは両生類であるが、一生を水中で過ごす。
ずっと長く飼っているウーパールーパーの体を長くしたような感じなので、
長男はお世話も勝手知ったる様子。
サイレン1号と2号は仲良く55ガロンの水槽に入っている。
視力が悪いので、時々お互いにぶつかっては
劇的に驚き、アタフタと泳ぎ回っている。

長男はひょんなことから父親の手伝いをして小遣い稼ぎをするようになった。
洗車や車内の掃除機かけ、重いものを運んだりと、
かなりの重労働をして、一日中外で汗を流している。
7月いっぱいほぼ毎日、そんな風に働いてお金を貯め、
ついに念願のマタマタをゲット。
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かなり個性的なルックスの亀である。
体についているビラビラといい、色といい、
枯葉の下に潜んでいたらカモフラージュはバッチリ!

気性はおとなしいが、狙いを定めた小魚を食べる瞬間は秒殺である。


きっと長生きするよ、一生飼うんだね?
と訊く私に、迷うことなく「うん」と答えた長男。
末永く、お幸せに・・・
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