移民家族 ~反省と考察~

4回に渡って書き連ねた移民家族の物語
最後に予想だにしなかった展開となり、本当にショックを受けた
母に電話で話を聞いてもらい、
日本人のお友達、アメリカ人のお友達、イラン人のお友達、
イランに住むオスカーの弟にも(オスカーを介してだが)この出来事を聞いてもらい、
そしてブログに書く事で、ようやく気持ちの整理がついた。

ブログに(またMixiやEメールを通じて)コメントを寄せてくださった皆さん、
ありがとうございました!


「もう二度と連絡して来ないで!」と言われた夜以降、彼らからの連絡はない。
ただ、その夜遅くに、Rさんの父親からEメールが届いていた。
(私は、翌日の昼過ぎまで、それに気づかなかったのだが。)
「父親に全部言いつけてやる!」と言っていたRさんが帰宅してすぐに告げ口したのだろうが、
父親はその件に全く言及してもいなければ、私への非難も、謝罪の言葉も何もなかった。
「できる限りの事をしてやってくれ。娘を助けてやってくれ。」
と言うような内容の事だけが、書いてあったそうだ。


あれ以来、駐車場でのシーンを自分の中で何度再生したか知れないが、
自分は間違った事は言っていない、相手に悪いこともしていない、と
確信が持てるので、後ろめたい気持ちはない。

国籍を問わず、色々な人に聞いてもらったが、皆が皆、
「その人はおかしい!」 
「ありえない!」と
口をそろえて言っている。
イラン人女性に話した時でさえ、あまりの無礼さに、彼女は息を飲んでいた。
Rさんには、異国の地で他人の家に暮らさなければならないストレスがあったとは言え、
あの感情的爆発は常軌を逸した言動だったと思う。

ただ、その背景には文化の違い、私達が至らなかった点もあるのではないか?

例えば私が家に一緒にいたり、毎食ご飯を作って食卓に並べなかったこと。
イランでは「お客様」が来たら、最高のもてなしをするのがマナーであり、
それをしなかった私達は歓迎的でなく、むしろ「失礼」だったのかもしれない。
私は「好きな時に自由に食べてね」と言えば十分としていたが、
皿に乗せた料理を相手に押し付けてこそ、
「食事を勧めてくれた」という事になるのかもしれない。

イランには「ターロフ」と言う社交辞令の様な文化がある。
ゲストはお茶を勧められたら遠慮して断り、
ホストは断られても勧めて勧めて、最後に出す、と言うのは、
双方がターロフを使っている典型的な例。
日本文化にもこれに似通ったやりとりはあると思うが、
日本の遠慮が相手の気持ちを読んで、汲み取るのに対し、
イランはこれを言語化してアピール、アピールしてなんぼ、と言う気がする。
だからRさんに対しても、
「あなたが来てくれて嬉しいわ、ずっといてね」とか、
「何か不自由なことはない?あったら遠慮せずに言ってね」とか、
ターロフ・シャワーを浴びせなかった私は気の利かない女だったのだろう。

そしてあの、「私の男に触らないで」について。
これは私にとって、完全な不意打ちだったが、
イラン人にとってはある程度、常識なのかもしれない。
女性が体を布で覆って、髪や肌を見せてはいけない、という戒律にしたがって生きていれば、
自然と体を神聖化して捉えるだろうし、
自由恋愛がそう簡単にできない社会では、
女性にとって夫は人生でたった一人の伴侶、つまり「自分の男」であるはずだ。
だから他の女が見るのも、触れるのも気に入らない、という気持ちは
多かれ少なかれ、彼女たちにあるものなのではないか?

そう考えた時、今まで自分がイランへ4度も赴き、
平気な顔で親類縁者の、見ず知らずの男性に握手の手を差し出していた事を思い出し、
今さら、冷や汗が出る思いであった。
握手をしてくれる人もいれば、中には自分の胸に手を当てて会釈をし、
私の手に触れなかった男性もいた。
その度に私は「敬意を払ってくれている」と自分の都合のいい様に解釈していた。
でも私が気づいていなかっただけで、実は
男性の後ろには、歯ぎしりする奥さんが私を密かに睨んでいたのではないか?
男性も「ホイホイ手を出しやがって、軽い女だ」と思っていたのではないか?
私には誘惑する気も、無礼を働く気もなかったけれど、
暗黙のルールを知らないばっかりに、多少なりとも相手に不快な思いをさせていたのではないか?

そんな事を考え始めると、自分がイランを、イラン人を分かっている様な気になっていたのが
とんでもない思い込みだった気がして来た。
オスカーの家族と心が通じている様に思っていた自分は、
本当は彼女や彼らに多大な迷惑を掛けていたのかも知れない。
皆笑顔で良くしてくれていたが、私の知らないところでは
「とんでもない世間知らずが来たもんだ!」と、
頭を抱えていたかもしれない。

オスカーにその不安を話すと、一笑に付されてしまったが、
アメリカに長年住んでいるオスカーの感覚もズレまくっているとしたらどうだろう?
2つの世界の常識は、全く別の物なのだから!
そして「私の常識」が、「皆の常識」と同じとは限らないのだから!


人間不信、自分不信になりそうである。
しかし、そういって投げ出してしまうわけにはいかない。
たった一人の、あの狂った女に、自分の人間観を崩されるほど、
私と、私の大切な人達との関係は浅くはないのだ!


できる限りのお手伝いをしようと努めていたら罵詈雑言を浴びせられた、
その日の夜に、オスカーはこう言った。
「それでも俺は諦めない。
人を助けるのはいい事だし、俺はそれが好きなんだ。
こういう変なヤツもいるかもしれないけど、
だからってもう人を助けるのは金輪際なし、って諦める気はない。」
それには私も同感なのだ。
生い立ちも、世代も、信仰も、全然違う私達二人だけれど、
最初から、そして今も、この人助けを良しとする価値観はピッタリ合うのだ。

オスカーが恩を仇で返された事など、数知れず。
私はこんな事一度くらいで、ピーピー鳴いているなんて、
まだまだひよっこだ。


最悪の中にも希望は必ずある。
この非生産的な状況から、素敵な事が起こった。
それは長男とオスカーの距離が一気に縮まった事。
オスカーは長男だからそうしていたのか、彼に厳しく、
今までほとんど一緒に行動することもなかった。
長男も、私には文句もワガママも言えるくせに、
「オスカーに言いなよ!」と私が言うと、全く言えないでいた。
ずっと長い間、二人の間には溝というか、距離があるなぁ、と感じていた私は、
どうにかして二人が歩み寄れないものか、と思っていた。
それが今回移民家族が来て、私が彼らをあちこちに連れて走り回っている間、
同行したくなかったばっかりに、長男はオスカーと一緒にいる、と言いだした。
そしてオスカーの仕事を手伝うようになった。
長男はずっと空手をしてきて、自宅でもちょくちょく筋トレをしている様な子なので、
私と同じくらいの、いや、もしかしたら私を凌ぐほどの力持ちになっている。
オスカーは長男に手伝いをさせてみて初めて、そのパワーに気づいたようだ。
その長男を「認めた」感が、始終伝わってくるのだ。
そして何より、それを長男が感じている事が、私にも感じられる。
親子の妙、こんな事で好転するとは!


親子と言えば、いまだに一つだけ、気がかりになっている事がある。
移民家族の双子の女の子である。
彼女たちは親の勝手で全く違う異国の地に連れてこられ、
あの母親の癇癪のせいで、夜の駐車場に取り残された。
一緒に過ごしたのは短い間だったけれど、11歳の彼女たちが、
必要以上に母親に気を遣って暮らしているのが気になった。

移民家族が滞在している間、丁度手に入った本を読んでいた。
それが西加奈子作、『サラバ!』上・下巻である。
saraba.jpg
(写真:ブクログより booklog.jp/users/gnvbunko

この物語も、イランで生まれた日本人の主人公が、
イラン→日本→エジプト→日本と、
両親に連れまわされる。
両親の人生に、子どもの人生が翻弄される。
目の前にいる双子の子ども達を見ていると、
そう思わずにはいられなかった。
良くも悪くも、親は子どもの人生を決めてしまう。
それを強く、感じた。

西加奈子の本は、必ず救いがあり、
最後に力強く 「それでも信じて行こう!」と、言ってくれている様な気がする。

選択肢のなかった子どもが、大人になって、
もがき苦しんでも、それでも何かを見つけて「信じること」ができればいいと思う。

あの双子が、どうか、強く生きて行けますように。
Comments

No title

そうですかーー 
もう奥が深くて深くて深すぎて、どこから何を言ったらいいのかわかりません。でも、Rさんはかなりcrazyだと思います。彼女の件に関しては、あまり文化的な違いを気にしすぎる必要はないようなーーー でも、フロリダ娘さんのおっしゃるように文化の違いからくる誤解の繊細さに気づくのは、誰にとってもいいことですよね。今回のようなことがご家族にとってプラスになったのはとてもよいことだと思います。私も3人の子供を育てましたが、困難な状況は、子供たちが育つ段階で、子供達にとってよいレッスンになることが多いようです。

うーん(唸った!)

夫もその兄弟も(イラン人ですが)、この話をしたら、みんな悲しんでいました。
わたしも文化と関係なく、Rさん個人が変なのだろうなと考えていましたが、この記事を読んで不意を突かれた感じです。そこまで考えたなんて、フロリダ娘さんは優等生ですな!
たしかに、イラン的もてなしや男女の関係を基準にしたら、そのとおりだったんじゃないかとわたしも思いました。旦那さんに手を触れたらアウトですね(爆)。でもそこはアメリカなので、郷に入っては郷に従えってこともあるんじゃないでしょうか。今後、ムスリム男性の体にフロリダ娘さんが触れないようにするのは可能かもしれませんが、つきっきりのもてなしやサービスの強要(笑)はちょっと難しそうですよね。
「ホイホイ手を出しやがって…」のところは笑っちゃいましたが、実際そうなんじゃないかとわたしも思います。外国人女性はそういうものだと知っている反面、自分の中のイスラム性と照らし合わせて「軽い女」と捉えている気もします。テヘランの人たちはその点、グローバライズされている(?)でしょうから、心配は少なそうですが。
それにしても、人を助けることに対するお二人の人柄がよく理解できました。

オスカーさんがご長男の仕事を認めるようになったんですか? ウフフ
"It was a good investment then!" て、お伝えくださいね。

ボーダさん

「文化の違いからくる誤解の繊細さ」、まさに!私にとっては良い教訓となりました。
ただ移民なのはRさんで、アメリカに来た以上、自分の慣れ親しんだ文化をそのまま常識として周りに強要してたら、これからもずいぶん生きにくいだろうなー、と思います。
子ども達、大丈夫かな?と今でも思います。
アパートの管理人として時々コンタクトを取っているSさん、子ども達の学校の登録を手伝ってくれ、と言われているらしいです。彼は子どももいないので、サッパリ分からないと伝えているみたいで、きちんと登録が新学期までに間に合えばいいのですが...

砂漠人さん

わたしも唸りっぱなしでした 苦笑
イラン文化って、ちょっと不思議ですよね。男女間は握手でも拒む人もいるのに同性同士だと両ほほにキス連続3回とか。初対面の親類にそれをされた時はけっこう面喰らってしまいましたが、慣れてしまえばアイスブレーカー、最初から否が応でも体も心も開いていかなきゃいけない、みたいな覚悟ができました。その強制開示(?)と触れるのはタブーの極端な落差に、外国人の私は足元をすくわれた気がします。
移民受け入れ第2弾はないと思いますが、今後あったとしても「私は至れり尽くせりできないよ」と口を酸っぱくして言うつもりです。

Good investment と認識が変わったか、訊いておきますね ウフフ

No title

う〜ん・・・
そこまで濃厚なサービス(?)はイランならば自然な事なのでしょうが、それを全く文化の違うアメリカに持ち込むのは無理がある気がします。
男女の握手については同じイスラム圏でもインドネシアはまだ割と融通が利く気がします。「イスラム教の戒律は東に行く程緩い」という言葉もありますから。ただ頬にキス三回は・・・私なら逃げちゃうかも知れません。なんせ他人がくっ付いて来るイコールドツかれる、と思ってしまうので(何故かは・・・まあそう言う環境で育ったと言う事で)

ふと2つ前の記事かな?に書かれていた事、「早くグリーンカード(永住権)が届かないかなぁ。届いたらすぐにでもイランに帰りたいわ」と言うRさんの言葉。私の頭の中に刺さりました。日本で随分前にですが同じ様な言葉を聞いたので(但し言った本人はイランのすぐお隣の国の人)正直私の少ない経験でも、こう言う人に永住権なんかあげたくないです。何故なのかは・・・ここは趣旨が違うので・・・

昇さん

色々な国からの移民が混在するアメリカでは、時々お国柄を出されて(時々強要されて)ビックリする事もありますが、お互い理解しようとする限り、違和感はあってもトラブルにはならないです。Rさんは私達が彼女の父親の知り合いだから、期待度が高く、怒りも大きかったのかも知れませんが、あの爆発を見た以上、他の人とも衝突を起こす可能性が高いと思います。アメリカ人に「そんなにアメリカが嫌なら早く国に帰れ!」と言われる日も近いかも?

永住権を取りたくて取ったはずなのに「早く帰りたい」発言。動機も様々、という事なのでしょうか?
その後も私と旦那の間で何度か『移民』と言うテーマで話し合っています。イラン人はなぜアメリカ永住権を取りたがるのか?経済政策下とは言え、不自由のない暮らしをして、家族や友人との結束力がある人達は何を求めてやって来るのか?
永住権の規定では「アメリカで生活の基盤を築くこと」が義務付けられているので、2国間を行ったり来たりの生活というのは難しいはずです。外国へ出られるゴールデン・チケットを手に入れる事だけが頭にあって、義務や苦労を全く予測していないと、移住してからの拒絶反応がひどいのかもしれません。それで周りの人や移住先の国を逆恨みする。なんだか色々な意味で残念です。

お久しぶりです。

翠ちゃん、こんにちは(o^^o)

お久しぶりです。お元気ですか?

たくさんBlogアップされていますね💞

キヨミさーん

ご無沙汰してまーす!元気ですか??
私達がキヨミさんのお宅にお邪魔した事も思い出してました。私達はこんなイヤなお客じゃなかったつもりですが、色々ご迷惑おかけしたなー、と改めて思ったり。本当にお世話になりました!
キヨミさんもフロリダに来てください。至らない私ですが、精一杯歓迎します。

No title

翠ちゃん、お元気そうで良かったです💞
迷惑なんて全くなかったですよー。いとことか付き合い全くないし、家に女子いないし姉妹もいないからとてもたのしかっです*\(^o^)/*
今でも翠ちゃんの息子さんの愛らしさハニカミ笑い忘れてないですよ(=´∀`)人(´∀`=)

実は翠ちゃんの旦那さんともっと色々話したかったです。
今はもうおみやってないから自由は増えましたよ。

新潟でお会いするのも楽しいかも?って思ったり。
パスポート取ってそのままです(笑)
お母さまもお元気ですか?

きよみさん

パスポートがあるならぜひフロリダに♪
去年は新潟できよみさんのお父さんに再会が叶ってうれしかったです。次に日本へ帰郷できるのはいつのことやら?ですが、今度こそ、きよみさんと会いたいです!
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