事実は小説より奇なり ~続・ある移民家族の物語~

とんでもない移民家族を迎え、そして一方的に絶交されてから、1か月が経過した。
もちろんこちらから連絡もしていなければ、向こうからも音沙汰なかった。


昨日のことだ。
車屋のオフィスのドアをノックして、M(移民家族・父)が入って来た。
彼は私達に軽く挨拶した後、オスカーに外へ出て話したい、
と促したらしく、二人は出て行った。

「R(移民家族・母)は、あれだけの罵詈雑言を吐いておいて、
今更、旦那を謝らせによこしたのか?」と
イライラしそうになる自分をなだめながら私は、
同時に、今度は何をどこまでお世話しろと言うのだろう?と
暗澹たる気持ちになった。

何時間もしてから、やっとオスカーが戻って来た。
またまた、信じ難いニュースを持って。

Mは、3日前に自宅で妻のRと口論の末、Rの顔面を殴った。
Rは警察に通報し、Mは連行されて留置場で2晩を明かした。
現在、Mは保証金を払って保釈された身であり、
期日未定の裁判に、いづれ出頭しなければならない。
保釈の条件として、被害者・Rに近付いてはいけないし、アパートにも帰れない。
「昨日は公園で野宿した」とオスカーに言ったそうだ。

「もうあの女には我慢できなかった!
俺はさっさとイランに帰ってすぐにでも離婚する!」と言うM。
オスカーはそこで、あの夜、Rが私に言った内容をMに伝えた。
Rが私を蔑む言葉を言った、と聞いて、Mはひどく衝撃を受けたらしい。
Mはあの夜、何度もRに「何を言ったんだ?」と訊いたが、
Rは「何も言っていない」としらを切り通したのだと言う。

M 「じゃあなんであの時、(フロリダ娘)は俺たちに
車に乗って行け、と何度も言ってくれたんだ?
Rがそんな事を言った後に・・・。
恥ずかしくて、もう合わせる顔もない。」

オスカーは複雑な思いだったのだろう。
Rの失態後、分別のある夫なら、こちらと連絡を取って
事態を把握するなり、何かしら行動できたはずなのに、と腹立たしい反面、
Mが野宿をしていると聞いて居たたまれなくなり、
結局、Mに車屋(第2店舗)に泊まっていい、と言ったらしい。
薄々、私はオスカーがそうしているのではないか、と思っていたが、
もう好きなようにさせておいた。


そして翌日(今日)、オスカーがオフィスに行くと、
Mはおらず、置手紙があった。
『自分の物を取りに行ってくる、午後には戻ってくる』と。
前日、勝手にアパートに戻ったら、また捕まるぞ、
と言っておいたのに、と嘆くオスカー。

「Mは今うちの車屋に泊ってること、Rにベラベラ喋っちゃうんじゃない?」
と、私が言ったが、オスカーはお構いなしの素振り。

昼過ぎ、警察官がやってきた。
Mを探していると言う。
その警察官はオスカーの事をよく知っていた様子で、
「自分やパトカーがちょくちょく来ていたら、ビジネスの邪魔になるから
Mが来たら電話して」と、
電話番号を渡してくれ、帰って行った。
しかしなぜ、警察官がMを訪ねて、うちの事務所に来るのだろう?
私が予想した通り、やはりRが警察に連絡したのではないだろうか?


夕方になってもMは戻ってこなかった。
私は裁判所のウェブサイトで、彼のファイルを検索してみた。
すると昨日は1つだけだったファイルは2つに増えていて、
新しい方のファイルには『被疑者拘留中』の文字が。

Mがアパートに現れたので、Rが警察に通報したのだろう。
保釈の条件である「被害者に近付かない」という命令を破ったので、
また逮捕されてしまったに違いない。

オスカーは同情する必要もないと分かっているが、
何だかかわいそうだ、と落ち込んでいた。

確かにRのキレ方と、病的被害妄想を目の当たりにした私も、
Mがこの1か月間、相当な努力で我慢したのだろうと思うので同情もする。
我が家に滞在している短期間にも、Rは誰かをターゲットにして責め、
怒っていなければ生きていられない様子だった。
その攻撃を一身に受けたMは、きっと耐えられなかったのだろう。

しかし、しかしだ。
手を出したのは完全にまずかった。
法的にも、そして戦略的にも。

私はMに望みを託していた。
どうにかしてRを説得するなり、そそのかすなりして、
イランに家族全員で戻る、という選択をしてくれないか、と。

Rは「してやったり!」とばかりに警察に通報しただろう。
英語が全く分からない、喋れないMは完全に不利だ。
右も左もわからないこの国で、2つの余罪を背負ってしまったのだ。
これから裁判にどれくらい時間がかかるのか、
そして判決がどう出るのか、私にはわからない。
しかし、家族揃ってイランへ帰る、と言う道は、ほぼ断たれたのではないだろうか?


夢の国へのフリー・チケットを手にした移民家族。
たった1か月で、父は犯罪者、
母は無職で、この先の生活の目途は立っていない。
娘二人は家庭崩壊を目の当たりにした。

そして今、あの狂った母親の「言葉の虐待」のターゲットとして残ったのも、
娘二人のみ。


私の想像を裏切って裏切って、
毎回より最悪な方向へと展開していく、移民家族の物語。

ここからはどうにかして、
「誇り高きシングルマザーが、新しい土地で身を粉にして働き、
二人の美しい娘を立派に育て上げて幸せになる」
という、ハッピーエンドになってほしい。
Comments

No title

何と言っていいか・・・  ため息ばかり出ます。
Mさんは釈放されたらイランに帰れないのでしょうか。でも、娘さんたちがいるんですものね。一人で帰りたくないですよね。Rさんはイランにいる時から精神的に問題があったのでしょうかね。とにかく娘さんたちとMさんがお気の毒です。特に娘さんたちですねー
近くでこういうことがあると、気持ちが飲み込まれちゃってエネルギー消耗しますよね。フロリダ娘さん、ご自分の健康に気をつけてくださいね。

ボーダさん

「気持ちが飲み込まれる」という表現、的確です。
私の個人的な感情、心配、罪悪感(主に娘さん達に何もしてあげられない事に対して)など、色々な気持ちが胸に湧いてはそれを打ち消して・・・という感じです。でも、元気ですよ! 笑
私も周りの人たちも未経験なので、DVの裁判の結果がどういったものになるのか、また裁判の過程(かかる時間)もよくわかっていないのですが「イランに帰る」というのは相当先の課題の様な気がします。それに暴力を振った前科がついてしまったMさんが娘2人を国外に連れ出せる可能性はかなり低いのではないか?とも想像します。
きっとイランでは、沢山いる家族や親類のサポートがあって問題にならなかったのかもしれませんが、Rさんは相当常識外れ、精神的に不安定な気もしますよね。娘達がお母さんの機嫌を損ねない様に気を遣っていたのが印象的だったので、以前から家庭内ではある程度暴君だったのではないか?と思います。ただそれがアメリカに来て「自由とパワーを手に入れた!」と錯覚し、度が過ぎるほどになってしまったのでは?と。
これ以上悪いニュースは聞きたくない・・・。

No title

そうですねー  イランのようなところでは、家族や親類のサポートが日常あるから、精神的に多少問題があってもなんとかなる程度に抑えられていたのかもしれませんね。昔の日本もそうだったと思います。それが最近は、そういうサポートがなく、なんでも一人でやっていかなければならないから、心のかたよりがある人は、暴走してしまったり。場合によっては結果的に病気扱いになって、薬を処方されたり、施設送りになったりすることになったり。そういう点は、西洋社会は厳しくて孤独だと思います。でも、フロリダ娘さんとご主人は、こんなアメリカ社会で暮らしていても、周囲の身近な人を大切にするという本来の文化のよい点を保っていらして素晴らしいと思います。

長文お許しください

ボーダさんと同感です。
そんな中にあって、翠さんたちの対応はすばらしいです。

事の続きを読んで、なんだか聞いたことあるような話だなと思いました。
イラン人って、ドラマチックですよね…。
さすが革命を起こす民族だ、などと思ってしまいます。
わたしなどかける言葉も浮かびません。

ハリルがコメントしたいようだったので、代弁させてください。
彼が言うには、現代のイラン人は思考形成にあたって、
周りの不必要な言動に影響されすぎているそうです(宗教しかり)。
その反動で、アメリカやヨーロッパなどリベラルな国は天国だという
考え方が今は流行っている、と。イランは特別すぎると思いこんでいる、と。
しかしながら、リベラルな国の現実を知らないまま、勝手な夢を
抱いてしまっているのだそうです。リベラルな国の現実を知るとは、
かの地では税金の支払いに始まり、家族の方法(妻や子供を叩いてはいけない
など)がイランの現実とはまったく異なることを知るという意味です。
イラン人女性は家庭生活において大した義務を課せられていません。
比較的、楽な生活をしていて、要求が多いのです。
しかしながら、家庭内では実権を握り、その強烈な感情に基づいて
家族を支配し始めます。
生活していく上ですべてのサポートをしてくれたパートナーを
刑務所に送るとは、人情のある人のすることではありません。
一連の出来事は、とても許容できる内容ではありません。
彼らは十分に裕福だったのに、外国に行ける機会を手にし次第、
こどものように野蛮な行動に出ました。
遠くの、ほとんどゆかりもない友人に面倒を見てもらったにも関わらず、
犯罪に至らしめるような方法で事を大きくしました。
それはまったく経験不足の幼稚な言動です。
その旦那さんはきっと、この発展の仕方がよくないことに気づき、
怒り余って奥さんに暴力をふるったのでしょう。
奥さんはそのチャンスを逃がさず、たちまち警察に通報して
彼を刑務所に入れました。
彼らは夢見がちな人々で、現実から相当離れたところにいます。
なんのまじめな計画もなしに、出来事は起こってしまいました。
わたしは彼が失ったもの(家族、友人、こどもの将来、仕事、お金、
奥さんがこの先どうなるか、など)を思うととても悲しいです。
このナイーヴな旦那さんが、帰路を見つけることができるよう願っています。
誠実な方法で努力すれば、必ずや神は彼を助けるでしょう。
悪いものをなくした後は、必ず幸せな生活が始まります。
彼は一所懸命努力しなければなりません(As I have done for three times)。

おっと、途中から預言者ハリルが乗り移ってしまいました(笑)。
非常に思うところある様子で語っていましたよ。
ちなみに3回というのは、犯罪を償った数ではないですよ、
奥さん探しの話です。彼の名誉のために。

ボーダさん

ボーダさんが西洋社会は厳しく孤独と書かれていましたが、それを裏付ける様な状態になっています。Mは留置場から病院の精神科病棟に移されたらしいです。短期なのか長期なのかもわかりません。鬱症状が出たのか、はたまた自分を傷つけようとしたのか、精神科に異動になった理由もわかりません。
留置場などでは全ての対応がマニュアル化されていて、そういう対処法となった筈ですが、いかにも西洋社会の対応ですよね。彼の場合、奥さんに通報されて留置場送りになったので、最初から孤独は感じているでしょうし、言葉も通じず、アメリカの法律もわからず、この先自分はどうなってしまうのか?悶々としていたはずなので精神的に自分を追い詰めてしまったのでしょう。
オスカーはかれに同情的と言うか、留置場なんて人の居るべき場所ではない、と言っているんです。実はここ3日、毎日イランからMの姉?妹?が泣いて電話して来るので、そこで情に流されている面もあるのだと思います。高額の保釈金を工面する方法もなくはないかなぁ、などと言ったりしています。
私は(考えが西洋社会に染まっているのかもしれませんが...)Mは留置場に居るべきだと言ってます。まずそこに送られる理由があるわけですから、反省すべき、という事。それから高い保釈金を払って出てきたら、家に戻れないわけですからモーテルなり何なり、住む場所や食費だってかかるわけです。留置場であれモーテルであれ、裁判が終わってアンガー・マネージメントのクラスに通うなり何なりが終わるまでアメリカに留まらなければならない。正直、保釈になった途端、Mはまたバカな行動をとってしまうのではないか?と思っています。留置場にいれば環境は良くなかったとしても、バカな行動ができないわけですから。アメリカ側から言わせれば、勝手に移住してきて自分達のイザコザで警察のお世話になり、精神科でメンタルのケアまでしてもらっているのです。厳しいかもしれませんが「甘えっぱなしじゃないか!」と思います。女1人殴るなら次に来る罰をしっかり受ける覚悟でやれよ!と思うわけです。
って、興奮してオスカーと喧々諤々やってしまい、「あぁ...翻弄されてる...」と情けない状態になっちゃってるんですが 笑

長文 感謝いたします

砂漠人さん、ハリルさん、
我が家が巻き込まれてしまったゴタゴタを真剣に考えてくださって有難いです。移民として他国で生活をされたハリルさんにとっては、ブログで言及していない部分や、背景の問題点なども達観して読んで頂いている気がします。
イラン女性についてのハリルさんの表現、この夫婦はまさにその典型という気がします。Rさんが家庭内で実権を握り、感情的に家族を振り回してきたのだろうと。アメリカに来て以降は、英語が話せるのはRさんだけなので、Mさんを日々「役に立たない」と言っていたのではないかと思います。我が家に滞在中、Mさんが皿洗いをしてRさんはベッドに踏ん反り返っているのを何度も見ました。重い物を買って私とMさんが積み込んでいても絶対に手伝わない。そして「夫は非協力的だ、ケチだ」と文句は言う。主導権を握るなら、それなりの行動力と包容力で家族を引っ張っていってくれればよかったのですが、Rさんにはその力量も経験もあまりに不足していた。それを認めることすらできなかった未熟な性格が家族を崩壊へと導いてしまったのだと思います。
「周りの不必要な言動に影響されすぎている」というのも的を得ています。Mさん曰く、先にアメリカに移住したイラン女性と連絡を取っているらしく、この一連の
家庭内暴力→通報→Mさんの再訪→再逮捕
という出来事もその女性のアドバイスがあったらしいです。Rさんが高額の保釈金を払うことになったり、夫を前科者にしてしまうこと、また家族がバラバラになってしまうことなどを警告されていたかはかなり疑問です。その証拠に2回も通報しておきながら、「Mに渡したいものがあるから持って行ってくれないか」とアパートの管理人に電話をかけてきたらしいですから、今でも事の甚大さを把握し切れていない可能性もあります。
イラン人は良くも悪くも感情に左右されやすい情熱的な人達なのでしょうね。人情深く、人を助けることに積極的である面もありますが同時に、激情に任せて行動し、後で説明すればどうにかなる、と思っている側面もある。
移民の集まりであるアメリカでは確固たる法で縛らなければ収集がつかないのだろうなぁ、という事を今回の件で痛感しました。


興味深いテーマです

ハリルはスウェーデンで通訳もしていましたから、移民のトラブルは
一通り知っているんでしょう(スウェーデンは、イラン人移民の割合が
とても高いんです)。
わたしがおもしろいと思ったのは、フロリダ娘さんがかなり
アメリカの立場に立った考え方をしているところです。
フロリダ娘さんの実際の言動はとても懐が深く、非西欧的な印象も
持っていたのですが、考え方としては非常に合理的というか、
アメリカ的なものも混じっていてとても興味深いです。
あと、なんだかんだいっても、Mさんに同情的である点で
オスカーさんとハリルが似ていましたね。
イラン人男ならでは、の見解なんでしょうかね。

砂漠人さん

アメリカの立場に立った考え、
「アメリカ側から言わせれば、勝手に移住してきて自分達のイザコザで警察のお世話になり、精神科でメンタルのケアまでしてもらっているのです。」のくだりでしょうか?
私は日々、自分は外国人と感じていますし、アメリカに住んでいる以上アメリカの法に裁かれる前提で生活しています。アメリカで生まれ育った人達の様な愛国心も帰属感もないですが、移民を広く受け入れているアメリカという国でルールをわきまえて、ちゃんとしていれば受け入れてもらえるという実感はあります。
Mさんが留置場にいるべき、という部分も合理的かもしれませんね。これは私の価値観と言うべきでしょうか?もし自分が人を殴って留置場に連れて行かれたら保釈なんてしてもらえるとは考えませんし、その覚悟で殴りますね。(ま、まず殴らないでしょうけど。) 保釈金を誰かに出してもらおうなんてもってのほか!と言うか自分で工面できない限り、じっと留置場で待ちます。それが無実であっても弁護士と相談しながら人様や家族にできるだけ迷惑かけない様にします。
それとRさんが法律や警察を大活用してらっしゃるので、下手に動いて訴えられたり、難癖つけられないように気をつけてます。相手が何をしてくるかわからないので。合理的な法と社会の中でそれに従って、つけ込まれないように構えてはいますね。
懐が深いかどうかはわかりませんが、善行と人類皆兄弟的なものは信じています。自分ができることなら手助けしたいと思いますが、今回のようにこちらに災難が降りかかる場合は無理です 笑。
西洋的、と一口で言ってもアメリカ人の懐の深さに感激した事も多々ありますから、こればっかりは育ち方と経験でしょうか?
オスカーやハリルさんの様な人がいないと、人類はたちまちギスギスしちゃうでしょうねぇ。クッション的な意味で必要不可欠な役回り、はたしているのではないでしょうか?

No title

わたしも懐の深いアメリカ人のことを考えていました。
おっしゃるとおり、育ち方と経験がいざというときにものを言うんでしょうね。
ブログを通して拝見した限り、フロリダ娘さんの日本のご家族からも
それは伝わってきます。
「アメリカの立場に立った考え」は、書いてくださったところがそうですが、
「メンタルのケアまでしてもらっている」というくだりに特にそれを感じました。
そういうことを、今のRさんには無理としても、Mさんに話して理解してもらえると
いいですけどね。でもいったい誰がその役割をするんだ? って話ですが。

フロリダ娘さんにとっては当分、頭痛の種が消えないでしょうけれど、
今後の進展も、興味深く記事を拝見したいと思います。

砂漠人さん

今回の事件、今後の対応はオスカーに任せようと思ってます。
私の思うところは上に書いた通りだし、オスカーはまた違う考えなわけで、それで私達夫婦が「ああだ、こうだ」議論しても空気が険悪になるだけ損ですから。
私も胸の内をここで吐露させてもらい、皆さんの冷静なコメントをもらい、落ち着くことができたので、次に何が起こるかはわかりませんが誠実に大人の対応ができればいいな、と思っています。

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