Mの帰国

2016年が明けた。
読者の中には、移民家族の父・Mが牢獄の中で新年を迎えたのか、と
心苦しく思っている方もいらっしゃるかもしれない。
なのでMのその後をご報告したいと思う。

投獄されて4か月が経過し、3度目の公判前手続きに直前に、
ようやくMの弁護士から
「きっと今回で片が付くだろう」と連絡が入った。
そして12月初旬、Mは釈放された。

起訴されていた3件のうち、2件は取り下げられた様だ。
1年間の保護観察を言い渡されたが、
この郡内に住んではいけないこと、
また妻に連絡してはいけないことのみが条件であった。

しかし釈放もめちゃくちゃであった。
夜の10時近くに突然オスカーの携帯電話に電話がかかってきた。
Mを釈放するから迎えに来い、と言うのだ。
「もう一晩とめてやってもらえないか?」と尋ねるオスカー。
どうやら断られたらしく、出かけて行った。
Mは郡内に住んではいけないので、
片道40分ほどかけて、郡の外にあるモーテルに連れて行かねばならなかった。

そして2日後に保護観察官に合わせるため、
オスカーがMをモーテルまで迎えに行った。
その際、イランに帰国する許可書を書いてもらった。
私は「そんなに簡単に出国できるのだろうか?」と訝しんでいたのだが、
正式に許可が下りたので、急いで飛行機のチケットを手配してやった。
そして釈放から4日後の朝、Mはイランへ向けて飛び立っていった。

オスカーも、そして私も、なぜだか晴れやかな持ちでいっぱいだった。

考えてもみてほしい。
右も左もわからぬ異国の地で、言葉もあやふやな状態で、
4か月も投獄されてしまう恐怖と絶望感を。
Mはとても痩せて、坊主頭になっていたそうだ。

イランに到着して、すぐにM本人と彼の姉から電話があった。
喜びに溢れた到着報告だった。
ようやく、肩の荷が下りた。
そんな気分。


その後も度々、Mと姉から電話がかかってくる。
私達にとても感謝していること、もとの銀行勤務に戻れたこと、
そして投獄されていた間の色々な出費は近いうちに返すから、ということ。
イランに帰った途端、もう連絡もこなくなるかも?
と思っていたけれど、思った以上に常識のある人だったらしい。
オスカーの弟のところには果物の贈り物までしてくれたそうだ。

アメリカにいる娘たちとも、どうにかして連絡が取れたらしく、
「靴をほしがっているから、買ってやってくれないか?」と頼まれたりしている。
娘たちがどうしてるのか、オスカー経由のまた聞きなので
詳しいことはわからないのだが、幸せな暮らしのはずがない。
靴や服など、娘二人が使うものならば、どうにかして届けてあげたいとは思う。
(現金をやったらRが好き勝手に使うのは目に見えているので嫌だが。)
今回の一番の犠牲者は娘たち二人なのだから。

Mによると、娘たちが「今、家を探している」と言っているそうだ。
そろそろ被害者救済団体の施設にもいられなくなるのかもしれない。
一生タダなんてサービスはないのだから、
そろそろRも自力で生き始めなければ。

もしかしたら「ある移民家族」シリーズもこれで終わりかもしれない。
もうすぐ母娘もイランに帰るかもしれないし、
この街に残ったとしても、私やオスカーの前に姿を現すわけはない。
Rのプライドが許さないはずだ。
いや、戻ってこないことを祈る。
双子の娘だけが、心配だけれど・・・。
Comments

No title

Mさんが釈放されて、イランに帰ることができて本当に良かった! 向こうでは暖かいご家族もいらっしゃるようだし、しかも元のお仕事にも戻れたなんて良かったですね。娘さんたちと連絡ができているというのもよかったです。娘さんたちのことはさぞ気がかりでしょう。
靴や服なら結構安い物も手に入りますからね。でも、私も現金は絶対ダメだと思います! Rはこれからどうするつもりなのやら。自分を変えでもしない限り、いいことないのは目に見えています。オスカーも大変でしたね。
子供たちがお母さんに似ないで強く生きてくれればいいですね。せめて、一人じゃなくて二人で良かったと思います。

ボーダさん

毎日のように電話をかけてきていたお姉さんの喜びようや、休暇期間を延長して復帰させてくれた職場など、帰国後の生活を聞いていると、向こうでは信頼されている人な様子です。自国でなら落ち着いて然るべき措置を取れるでしょうから、いつか娘たちとも再会できるように頑張ってほしいものです。
子どもたちはどう思って日々生活しているのでしょうか。ここ数日寒いので、朝スクールバスを待つ間に風邪でもひかなければよいのですが。本当に二人というのがせめてもの救い。二人で協力して強かにいてほしいです。

驚き!、世界は動いている

日々の喧騒に流されないように生きていたのですが、
地球の別の所で、大きな波がうねっていたのですね。

一連のブログを読み、とても驚きました。
また、ご家族が、よくぞ日々を生き残ったという感想です。

Mさんが帰国できて何よりです。
双子ちゃんも帰国できると良いのですが、、、。
(夢の国には、相当の覚悟と努力が必要ですものね)

Shoさん

前年の公判は大きな波どころか津波級の波で、私はアップアップ、溺れそうです。
移民家族のことあり、そして長男の怪我あり・・・ 今年に入ってMの姉から連絡はあるものの、取りあえず直接的には関係していない分、少し問題が減ったかもしれません。
試練の時こそ人間の真価が問われる時。そう肝に銘じて立ち上がる日々です!
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