夏なのに大忙し

大きな大学で成り立っているこの街は
学生数が激減する夏季は経済も回らなくなる。
飲食店から小売店まで5月から8月にかけての売り上げは
その他の月の半分以下なのではないだろうか?
その煽りをくらって学生とは直接関係ないビジネスも
売り上げ停滞期になる。
車業界もしかり。

そんな中、いつになく慌ただしく忙しい日々が続いている。
オスカーが一念発起で車の一斉処分をしているからだ。

自主的に思い立ったわけではなく、
二軒隣のご近所さん、オスカーの宿敵・ジョーが
またまた市に苦情通報したのが発端だった。
我が家の車屋は大通りに面しているが、
お店の脇の道は細い小路である。
小路は舗装が途中で終わり、
未舗装道路に我が家、その奥に住宅が5軒あるのみで行き止まりになっている。
その小路、左側に斜め駐車でズラリと車が並んでいる。
全てオスカーの車である。
小路の右側、車屋のフェンス前には低木と雑草が生い茂っている。
この両脇の状態から「自宅に帰れない」とジョーは言う。
「車で通れない」と。
過去にも色々な理由で苦情通報をしているが、
その度にオスカーは市と一悶着。
「小路左側の車を全て移動しろ」と言われれば、
「なんであそこに駐車してはいけないんだ?」と反撃。
「ナンバープレートのない売り物の車を駐車しているだろう」と言われれば
ナンバープレートがついた車をズラリと並べて対抗。
そんな悪名高いオスカーなので、
今回は市の職員が車5台で乗り付け、
約10名ほどで一斉ガサ入れ。
私はたまたま外出していて戻ってきたら
職員があっちにもこっちにも。
撤去命令のシールを車の窓ガラスに貼り付けていてビックリ。
ボスらしき人に負けじと反論し続けるオスカーを尻目に
シラーっとオフィスで作業。
さすがオスカー。
この後に及んでフェンス前の雑草は
公道なのだから市が管理・美化すべきだと主張している。
結果、改善猶予1ヶ月と言い渡されていた。
が、雑草・低木は市が処理してくれる事になった。


オスカーは独自のネットワークを使い、
内部に通じた人間から、あるEメールを手に入れた。
それは市の職員の間でやりとりされた『報告書』のようなものだが、
公的なものではなく、くだけた調子で書かれていた。
「あのビジネスはジャンクヤードをやっている。
小路のフェンスもボロボロだ。
設備投資をしてフェンスを直したり、
もっと小綺麗にしておけば、大概のことには眼をつぶるのに
反省の様子が全くみられない。」


オスカーの車の買い方は病的だ。
すぐに売り物になる車だけならいいが、
誰かが廃車にすべき様な車を持ってやってくると
ついつい買ってしまう。
事故車なら使えるパーツを取って置いておく。
それが積もりに積もって大変な事になっているのだ。

応急処置で知り合いのレッカー会社の駐車場へ
車を移動させる事になり、
私も助っ人で皆を迎えに行った。
かれこれ15年以上働いてくれている寡黙なメカニックのホセが、
私に喋りかけた事など皆無の彼が、
「もう、買わせるな」と
苦笑いしながら言ってきた。
そうなのだ。
メカニックも、私も、子ども達でさえ、
敷地からあふれ出した車のせいで巻き起こる
一連のトラブルにウンザリなのだ。

オスカー本人は胸中怒りで沸々としている。
そういう時は無口になる。
私は「だから車を買わなきゃいいの!」と
チクチク言ってしまうので、
私に愚痴れば逆効果なのを知ってなのか?
あまり言うと逆効果で頑なになってしまったり、と
なかなか扱いの難しい頑固オヤジである。
しかし無口なホセの一言は、私にとってかなりインパクトがあり、
オスカーにとっても効果があるだろう、と思ったので
出来るだけシンミリと伝えてみた。
「今日さぁ、ホセにこんなこと言われたよ。」
反応は...
口数少なかったけれど表情に反応あり (ニヤリ)。

いやいや、ここで心動かなければ鬼である。
何も言わずに付いて来てくれるメカニックの二人に対して、
やりたい放題やらかし続けた末の
とっ散らかった現状をどうにかしてもらうんだから
ありがたく思ってもらわなきゃ、こっちもやってられんわ!


さて、改善である。
まず市が約束を守り、フェンス前の雑草、低木、道に迫り出した頭上の枝まで
綺麗に刈り取ってくれた。
大きなトラックが来て切った枝を粉砕して運び去ってくれ、
それだけで小路はグンと広くなった。
しかしこれでフェンスの老朽化が露わになってしまった。
低木に隠れていた、と言うより、支えられていた、と言った方が正しい。
そこでオスカーと二人のメカニックがフェンスを立て替えた。
出来るだけ高さのある物を、と探して
2日がかりで見事なフェンスが完成。

とうとう火が付いたのか、オスカーは止まらず、
次にフェンスの中の車を廃車にする作業に取り掛かった。
寿司詰め状態の車と車の間には草が生い茂り、
ドアも開けられたものじゃない。
私などは蚊の襲撃に恐れ慄き、近づけやしないが
勇ましいオスカーとその仲間達は、毎日その藪とボロ車に挑む。
灼熱の太陽にも負けず、朝から晩まで
動かない車を引っ張り、押し、時には掘り出し、
一日20〜30台ペースでスクラップ場へレッカーしている。
長男もここニ日、汗だくになって手伝っている。
すっかり青年らしくなった彼は、力も気持ちも大人に負けていない。

私は...
申し訳ないが涼しいオフィスでドッカリ座っている。
廃車にする車の登録書を一台づつ探して
名義変更の書類を作っている。
現在約80台ぶん。
敷地の2/3くらいまで進んだ様なので、
もう一踏ん張りか?
猶予期間はあと三週間ほど。

頑張れ!オスカーと勇敢な仲間たち!
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